会長ブログ

『心と行動のガイドライン』の繙き(ひもとき) (3)

『心と行動のガイドライン』の繙き(ひもとき) (3)

❸時を守り、場を清め、礼を正す

 

「おかげさま」を実感するとき、私たちは豊かな心持になり、幸せを感じているのではないでしょうか。 

この三原則は、森信三先生が学校再建の三原則として掲げられたものを当社の理念に引用したものです。

この三原則をきちんと守れている会社で、赤字の会社は見たことがありません。

また、逆にこの三原則を守れていない会社で儲かっている会社も見たことがありません。

経営学的には証明されていないのかもしれませんが、経営にとってこの三原則が重要であることは、体験的に言って間違いはありません。

 

「時を守る」

 

人のお金を盗めば、法律で罰せられ罪に問われます。

しかし、考えようによっては、お金よりもはるかに大事な時間を盗んでも、法律では罰せられないのです。

それだけに、この時を守ることには、その人の本当の意味での信頼性が現れることになります。

 

私は時間を守らない人との取引は原則しないことにしています。

採用でも面接に遅れてくるような人は採用しません。

時間を守らないということは、単に時間を守らないのではなく、こちらと信頼関係を結ぶつもりが希薄だということです。

それ故、そのような人とは関係を持とうとは思わないのです。

 

十人の人が集まって会議をする場に十分遅れることは、遅れた当人にとっては僅か十分のことであっても、全員の分を合わせれば百分を無駄にしたことになります。

まして遅れるにもかかわらず連絡さえしない人は、そこに集まっている人を尊重するつもりがないことを、態度で示していることになります。

それでは信頼関係が生まれるはずがありません。

 

それ故、信頼関係を大切にする組織では、皆が約束の時間は守るのです。

人生でいい人間関係に恵まれたいのであれば、まずは人と信頼関係を築かねばなりません。

時間を守ることは、その最初の一歩だということを忘れないようにしたいものです。

 

「場を清める」

 

雑踏の騒音(ノイズ)の中で、集中してものを考えるのは容易なことではありません。

また、騒音の中では、緊張感が高まり不安になります。

反対に静寂の中では、心が穏やかになって不安がなくなり集中力が高まります。

同様に視覚的にノイズが多い時にも、神経を集中することは難しくなり、不安が心を支配するのです。

それ故心を穏やかにし集中力を高めるためには、視覚的ノイズを減らすこと、即ち「場を清める」ことがたいへん大事になるのです。

 

乱雑で整理が出来ていない現場は、たいていの場合、原価管理も工程管理も安全管理も行き届いていません。

心の乱れがすべてに現れるのです。

こんな時の解決策は、まずは「場を清める」ことです。

そして、心を穏やかにして集中力を高めるのです。

 

また、「場を清める」過程も、人間形成の上でとても重要です。

掃除は下坐行だとよくいわれます。

誰もやりたがらないことを、毎日手を抜かずに、丁寧にやることによって、謙虚さ、素直さ、感謝の心がその人の内に育まれて、不満や言い訳が減り、自責思考が身に着いていく。

この下坐行によって自分を磨くことで、過酷な運命さえも受容できる人間に育っていくことができるのです。

 

「礼を正す」

 

「礼を正す」ことが組織の中に浸透して来ると、例えば次のような振舞いが頻繁に見られるようになります。

 

① きちんと挨拶できる。

 

気が向いた時や機嫌のよい時に挨拶するのは、誰にでもできることです。

しかし、いついかなる時にでも良い挨拶するのはなかなか難しいものです。

「我」を手放して相手に寄り添う気持ちを優先しなければ出来ることではありません。

 

② 相手の話を最後まで聴く

 

これも簡単なようで難しいことです。

人の話を遮るという行為は、話をしている相手を軽んじている証拠ですから、話を遮った途端にそのことが相手に伝わってしまいます。

それ故、その相手と信頼関係を築くことは難しくなります。

 

③ 場に敬意を払う。

 

ここで言う「場」とは、単に物理的な空間のことを言っているのではありません。

人を育て支えてきた「人の集い」のことを言っているのです。

国、会社、その他様々な共同体も「場」だということができます。

「場」は人を映し、人を形作ります。

場が荒れると人も荒れ、場が整うと人の心も整います。

 

そんな場で「自分は忙しい」「自分は偉い」という姿勢で、自分の都合を「場」よりも上に置く人は、その「場」にいる人を軽視しているのです。

具体的には、黙って会議に遅れて入ったり、空気を無視して勝手に話しはじめたりするのは、自分を特別視して場を荒らしているのです。

そんな人がいる場では、生産的なものは生まれてきません。

 

「場に敬意を払う」とは、その場が皆にとって大切な場であることを認識し、人の意見に耳を傾け、自分がどういう影響をこの場に与えるべきかを考えることなのです。

要するに「和」が基盤であることを自覚して、場を大切にすることなのです。

 

この三原則は、個々に独立したものではなく、深い所で繋がっているのです。

「時を守り」は社会的責任の自覚であり、「場を清め」は心を整えることであり、「礼を正す」は他者への敬意です。

この三つが揃った時、組織の中に確かな信頼関係が生まれ、全体が私たちの居場所として良くなっていくのです。

人間は自分一人では生きていくことができません。

私たちは集団の中で支え合いながら生きているのです。

その支え合いが確固としたものになるための原則が「時を守り、場を清め、礼を正す」なのです。