会長ブログ

家庭について

老人ホームを経営していると、好むと好まざるとに関わらず、人様の家庭事情を覗き見てしまうことがあります。

旭長寿の森を開設した二十五年前に比べると、今は明らかに家庭の状況が悪くなっているように思えます。

社会の最小単位である家庭は、身体に例えれば細胞だということもできますが、その細胞が壊れつつあるというのが実感です。

細胞が壊れてしまえば身体の再生が不可能なように、家庭が崩壊すれば社会の再生も不可能になります。

家庭の崩壊を食い止めるのが、今日の日本の最大の課題といっても過言ではありません。

 

人は愛があってこそ育つものです。

特に母の愛は、無償の愛であり、子供が育つには必要不可欠です。

母親は子供のために自分を犠牲にし、それでいて犠牲になっているとは思いません。

そして、たとえ子供が罪を犯そうとも、母親だけはどこまでも子供の味方であり続けます。

そんな母親に、子供は自分は必要不可欠なかけがえの無い存在であるという自覚を受け取り、その自覚を杖にその後の人生を歩いていくのだと思います。

 

家庭は社会の最小単位の共同体として現在の社会を支えると同時に、子育てによって社会の未来をも担うという重大な責任を果たしているのです。

当社で働く皆さんは、その家庭に対して大きな役割・使命を果たし、同時に会社においても社会に対する役割・責任を果たしておられるわけです。

 

最近ワークライフバランスという言葉が流行っていますが、ともすればこの二つの共同体を対立するもののように捉える向きもあるようです。

しかし、この二つは決して対立するものではなく、同じ同心円上にあって、互いに支え合っているものだと思います。

そして、この二つの共同体が両立しなければ、お互いに危機的状況に陥るのです。

そう理解した時に、このワークライフバランスが意味を持つのだと思います。

 

また、バランスというと、「平均」というイメージがありますが、私はそれよりも易経で言うところの「時中」が正しいと思っています。

家庭と会社がいつも同じ状況であるならば、「平均」が「時中」になるのかもしれませんが、いつも同じ状況とは限りません。

それぞれの状況に応じて相応しい対応(時中)を取るべきだと思うのです。

家庭がピンチの時は家庭に、会社がピンチの時は会社に比重をかける。

そうして初めてこの二つの共同体に対する役割・責任を全うしていけるのではないでしょうか。

 

 
私たちはそれぞれの家庭の役割・使命を担い、同時に仕事においても役割・使命を負っています。

この二つの役割・使命を全うすることが、人生における最大にして最高の目的といっても過言ではないと言えるのではないでしょうか。