会長ブログ

思いが人生を決める

思いが人生を決める

松下さんは、

「そんな方法は私も知りませんのや。

知りませんけども、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」

と答えられました。

そうすると、「全然答えになっていない」と皆が失笑するのです。

しかし、私は強烈な印象を受けたのです。

 

つまり、松下さんは、

「まず思わなかったら、そうはならない」

ということを言われたのです。

理想に対して、

「そうは思うが、現実には難しい」

という気持ちが心の中にあっては、ものごとの成就が妨げられると言われたのです。

(稲盛和夫「心を高める、経営を伸ばす」)

 

稲盛さんも創業した頃は、会社経営の経験もなく、どのように経営するべきかを大変悩んでおられたようです。

そんな時に、松下幸之助の講演会があると聞いて、忙しい仕事の合間を縫って何とか時間をつくり会場に駆け付けたのです。

その時に松下幸之助は「ダム式経営」について話をされました。

その講演後に行われたのが、冒頭にあげた問答です。

 

会場の聴衆のほとんどは、松下さんからダム式経営を実現するためのハウツーが聴けずがっかりしたのですが、稲盛さんだけは喜び勇んで、すぐに会社に取って返し、全社員を集めて松下さんから聴いた話をしたのだそうです。

 

稲盛さんは冒頭の文章に続いて次のように述べておられます。

 

人は自分が信じてもいないことに、努力できるはずがありません。

強烈な願望を描き、心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、ものごとを成就させるのです。

 

稲盛さんが、その時社員に言って聞かせた内容も、このようなものだったでしょう。

同じ講演を聞いても、ほとんどの人が汲み取れなかった真理を、ひとり稲盛さんだけが聞き取れたのは、稲盛さんがそれだけド真剣に経営に取り組み、経営の本質に迫っておられたからに他なりません。

 

なぜ思いがあると実現するのか。

やはりノウハウが必要なのではないか。

多くの人はそんな疑問を持つに違いありません。

私もそんな疑問がないわけではありません。

しかし、これまでの自分を振りかえってみると、自分が「本当に」思い描いてきた会社の姿は、確かに実現されているのです。

この「本当に」が大事なところです。

頭の隅でちょこっと思ったくらいではダメなのです。

心底思っていなければならないのです。

 

そんな常に念頭から離れない強烈な願望があれば、何かの判断に迫られた時に、必ず願望が実現する方向に判断することになります。

例えば、一級の試験に合格したいのであれば、「今日は疲れたから、勉強は明日にしよう」と思ったときでも、「いやいや、今日も勉強しなければ」と思うようになるはずです。

また、街を歩いていても、実現したいことに参考になることがあれば、必ず目に入ってくるようになるのです。

本当に実現したい願望を持てば、その実現を助けるヒトやモノの存在に気付けるようになっていくのです。

 

当社の目指す姿の「お客様の夢に寄り添い、笑顔とワクワクの止まらない会社」の「ワクワク」が生まれるためには、その前提に願望がなければなりません。

実現させたい強烈な願望が「ワクワク」を生む原動力なのです。

 

今の日本人のほとんどが、夢や願望を持たずに生きているように思えます。

「自分さえ良ければいい。今さえ良ければいい。」と思って生きている。

ワクワクなどどこにもない、謂わば動物的人生を生きているように思えてなりません。

せめて、森長工務店の社員の皆さんには、もっと楽しい人生を送って欲しいのです。

 

稲盛さんの後継者伊藤謙介さんが、稲盛さんと最後の食事をした時の様子を次のように書いておられます。

 

焼酎のお湯割りをいただき、赤ワインも進んだ。

小一時間ほどたった頃、稲盛は、静かに腕を組み、目を閉じた。

一~二分くらいだったか、いやもっと長かったようにも思えた。

おもむろに眼を開くと、「よくやったなーー。奇跡だなーー」と語りかけるようにつぶやき、手を合わせた。

人生をともに走った全ての人に贈る、共感と感謝の言葉であったように思う。

 

夢を追い、全力を傾けた人生の最後には、このような深い感慨が待っている。

このような深い人生を送りたいものです。